本記事の背景
工事現場や建設現場等においては多数の重機が作業員から程遠くない距離で動作しており、常に事故の危険を考慮し、安全確保に努める必要があります。
一方、ただでさえ人手不足な中、安全確保だけのための要員を常に確保するわけにもいきませんし、現場の状況によっては視界が不良であったり、多忙が故、注意不足になりがちである等、現場での安全を人間のみで確保することはそう簡単ではありません。
本記事では、こうした課題を解決するため、作業現場での安全確保を行うためのAI活用事例として、作業員と重機の距離関係のリアルタイム解析技術を紹介します。
AIによる距離関係のリアルタイム解析を利用した安全確保
下図のように、ショベルカーの近くに作業員がいる現場があるものと仮定します。
※当社は既に 本技術について実際の現場でのPoCを実施し、その有効性を確認 しています。他方、本記事においては当該現場の画像を利用することはできないため、 当方にて作成した仮の画像を用いて説明 します。
1番目の写真は、もともとの解析対象とする現場画像。2番目の画像は1番目の画像に対してAI解析を行った結果を表示しています。
以下、AIの解析内容について、段階を分けて説明します。
①作業員及び重機の頭部分を認識
カメラに映る作業員と、危険性のある物体(ここでは重機の頭部分)とをそれぞれ認識します。
赤や緑の四角形で囲われた部分がAIが認識したそれぞれの物体、作業員 です。
②危険物と作業員の距離計算
次に、危険物と作業員とがどの程度の距離関係にあるかを計算します。
図中の 赤や緑の線で示された部分が、重機の頭部分とそれぞれの作業員との距離 を示す線です。
ここで、例えば作業員①と重機の頭部分との距離は極めて近く(危険領域)、AIはそれらを認識・計算し、距離線と四角形をそれぞれ赤色で表示をしています。
一方、作業員②との距離はそれほど近くないため、緑色にて表示をしています。
このように、AIが常に危険物と作業員との位置関係を把握し、それぞれの距離が危険領域に達した場合を検知する、といったことが可能となります。
※本記事、シミュレーションでは、AIの解析を可視化するために、四角形で囲う、距離関係を線で表示、色で危険かどうかを識別、といった工夫をしていますが、実際のユースケースではこれらの解析内容を必ずしも可視化する必要があるとは限りません。
可視化はせずに、危険領域に入ったことを重機の作業員に音等で通知 する、といった利用が考えられます。
技術の応用可能性
今回の記事では、危険物と作業員との距離関係を解析し、安全確保に利用する、といった利用ケースを想定していますが、下記のような別のケースも想定することが可能です。
重機システムへの組み込み
AIシステムを重機と連携させることで、危険領域に入ったことが検知された場合は重機の動作を強制的に停止させる、といった利用が可能と考えられます。
危険領域への侵入検知
距離関係によって危険の有無を判断するのではなく、事前に危険である領域を指定し、そのエリアに人間が侵入した場合、侵入しそうになった場合等をAIが検知し、通知する等のケースが考えられます。
弊社では既にこうしたケースに対応するための技術である、デイリを開発しており、対応が可能です。
※下図はデイリの解析イメージ
海外での事例
その他、海外では既にこうしたAIを作業場での安全確保に利用するケースが複数見られ、AIによる安全確保は既に実用段階に入っていることがわかります。
まとめ
弊社にては画像・動画を中心とした開発を多く手掛けています。
上記にて提示した方法以外での活用案やご要望についてのご提案・ご相談等、弊社にては実際のお客様のご要望・ご状況の詳細について一からご相談にのり、適切なソリューションの提供に努めております。
ご質問・ご要望につきましてはお問い合わせからお気軽にご相談くださいませ。